夜編 フェリー接岸

 秋の日は、つるべ落とし。

 陽が落ちた見知らぬ町は、すっかり闇に飲み込まれた。
食事をしようにも、どこがどこやら、全く検討が付かず、夕食もコンビニとなった。
ここまできてコレかよ?と思わないでもないけれど、疲れていて食欲も無いので、とりあえずエネルギーになればいいとする。
 
 午後7時、動くのも面倒なので、空いてきた釣り公園駐車場に車を入れ、シートを倒す。
昼間の車内は、冬物が暑くて、ワンピの上着を脱いでも汗ばむほどだったのに、夜になると、ウソのように冷え込んできた。
 それでも、車外に比べれば、十分すぎるほどに暖かかったのだけれど。
 
 フェリーは、時に、30分ほども早く着くことがある。
そう思って、車を移動すると、遠くにそれらしき灯りが浮いている。
 そう「浮いている」

 あれほど巨大なフェリーなのに、近くの工場の稼動音のせいか、姿が見えても、微かなエンジン音すらもしない。

 ウソっ、まだダイヤの時刻には、30分以上もあるのに?
まあ、いいかと、撮影体勢に入ると、この時期なのに、夜の海は以外なほどに寒く、カラダが震えてカメラが固定できない。
 昼間用にと一眼も持ってきていたけれど、フェリーが動くので、シビアな一眼では撮れないことは判っている。

 周りには、まだ釣り人がチラホラと…
今日の海は、なんだか明るい。



 空には、微かに雲が見える


海に浮かぶ光りの塊が近付いてくる  肉眼では、もっとキレイなんだけどね


向かいのコンビナートもしっかり撮れている       


  方向転換を始めた


       ゆっくりと、


 ここらで、左側で釣りをしていた数人の男の人達の、ウチの1人が話し掛けてきた。
「ドコから来たの?」とかなんとか・・・(しっかり釣竿まで写っているし?)
 まあ、飛騨ナンバーのシルビアを見れば、バレバレなんだけどね。
 
 「随分遠いところから!」とかなんとか言う彼は、三重県と岐阜県の境辺りの人で、昨夜からイカ釣りに来ているのだとか。
昼間見たときも、停まってる車のナンバーは、滋賀、岐阜、三重、京都、かなりの広範囲だった。
 
 お決まりの会話の最後、「来年?ここへ飛び込んで、ドザエモンになって浮いてるかもよぉ?」と返せば「その時は、オレが釣り上げてやるよ」ってさ?
ちなみに、お目当てのイカは釣れなかったそうだ。



「すずらん」の巨体が近付いてくる


去年の暮れに見たときと、入り方が違うのは船長によるらしい(と、釣り常連の彼の言葉)


 もう、フレーム外になってしまった



接岸を眺める釣り人まで写っている



 相変わらず、見事な接岸ぶり (タマには、ブツかっても良さそうなものだが)
飛びついて、抱きつきたいような気分?  相手は巨大なフェリーだっつーの!




いつものように、三脚代わりにされてる愛車に、フェリーが写り込んでいる



冬場は、駐車場もガラガラ、ランプウェイもトラックばかりだね



トラック入り口から進入して、後部乗船口付近を撮影 入り口には「釣り禁止」の看板が


午後10時10分頃

岐阜市内県庁付近

 昼間は混雑するこの辺りも、
流石にこの時間じゃ空いている

夜なのに雲すら写る、妙に明るい夜だった

 岐阜市内の高架を走っていた時、左下のピルの間に、妙なものが浮かんでいるのに気付いた。
某店のマークかとも見えるそれは、異様に紅い、大きな半月だった。
 濃尾平野から登ったばかりだったらしいそれは、私が見慣れてる小さな月じゃない。

 体力も底を付き、今にも意識が無くなりそうだったのに、月に吸い寄せられて、目が離せない。
紅い大きな月、どこかで撮れないかと、月ばかり気にしていたせいで、辛うじて運転できたようなものだ。
 月に惹かれて、そのまま遠くへ行ってしまえそうな夜、ようやく車を停められる場所に来た時には、いつもの小さな銀色の月になっていた。

 家に着き、車を降りれば、いきなり腰砕け、歩くとフラフラするのに、まだ、さっきの妙な覚醒感は続いている。
根性で風呂に入り、眠剤を飲んで強引に寝た。

 翌日の疲れは、前日よりも倍増、食欲ゼロというか、全く空腹感が無い。
まあいいかと、缶入りのカロリーメイトを流し込み、ようやくモノが食べられたのは夕食の時。

 疲れているのに、体が寝てくれない。
その状態は、今も(26日)も続いている。
 あの紅い月に、魂を持っていかれたかな?  

零時20分頃 自宅付近で

普通の銀色の月

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